ベビー・ローズ

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5年前の春浅いころ、初めて降りた駅で、迷子になった。

勘を頼りにその辺を歩きまわってみたが、事態は悪化する一方だった。

ついにあきらめて、道を尋ねるために、街角の花屋さんに入った。



薄暗い店内は予想外に広く、予想外に品薄で、入り口近くのコンクリートの床には、

鼻づらの長い大型犬が、平たくなって寝ていた。

声をかけると、作業台の前で、仕入れた花を捌いていた背の高い女の人が、億劫そうに顔を上げた。

彼女が手にしているバラの、ピンク、オレンジ、イエローが、マーブル模様のように溶け合った

不思議な色合いに目を奪われ、本来の目的も忘れて、思わず、

「それ、一本ください」と言っていた。



顎先で頷いた彼女が意外に時間をかけて選ってくれている手元を眺めながら、

「こんなにきれいに咲いてるのに、いつかは散っちゃうんだものねぇ…」

ひとりごと半分に言った私に、「挿し木にしたら?」

やはり、ひとりごとのような答えが返ってきた。

バラの挿し木は私には難しすぎて、成功したためしがないの、と打ち明けると、

ふっと目元を和らげて、「切り方かな?」

茎の下部を、迷いのない鋏づかいで、パチンと切り落としてくれた。



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その日、一本だけ買って帰ったバラを、ガラス壜に挿して、机の上に飾っておいた。

その年はいつまでも寒かったせいか、バラは一か月以上もきりっとした輪郭を保っていたが、

やがて自然の摂理に従って花びらを散らした。

長く咲き続けてくれたことに感謝しつつ壜から抜いてみると、なんと切り口にカルス(瘤)ができて

発根している!

遅まきながら、あの時の女主人の手際に感心しつつ、いそいそと鉢植えにした。




バラは年毎に大きくなり、細かった茎も、幹と呼べるくらいに太くなった。

「あの時のバラね、根付いたのよ!」と、ずっと彼女に伝えたいと思っていた。

その後、たまたま近くまで行く用事があって店を訪ねてみたが、

あの仄暗い花屋があったところは、大きなガラス窓の美容室になっていた。



薔薇園で咲き誇っている仲間たちと比べたら、ささやかすぎる花だが、

私はこのバラの手入れに余念がない。

そのたびに、たった一度だけ会って、ふたことみこと言葉をかわした人のことを思い出す。




去年の秋、このバラの足元に、小さな赤ちゃん苗をみつけた。

濃い緑色の葉っぱはつややかで、まっすぐな良い姿をしていた。

うちのバラが実生で増えたのは初めてだったので、なんともいとおしかった。

冬が去り、春が深まっていくにつれ、丈が15センチほどになり、あれれ?

一人前に、てっぺんにつぼみらしきものもついた。



そして今日、待ちに待ったつぼみが開いた。

親はピンクからオレンジ系の混色なのに、こちらは混じりけのない白。

バラ栽培の知識がないから、どうしてこうなったのかわからない。

ただ、不思議なこともあるなぁ、と思うばかりだ。



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お久しぶりです。
おいでくださって、本当にありがとうございます。
諸々の事情に加え、娘の病状が思わしくなかったこともあって、
すっかりブログから遠ざかってしまっていました。
こんなに更新できないならいっそ閉じてしまおうかとも思うのですが、
なかなか思い切れずに、だらだらと続けさせていただいています(´ω`;)
しばらくは、こんなペースになってしまいそうですが、
またお立ち寄りいただければ嬉しいです(^ω^)





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by mofu903 | 2015-05-16 13:55 | 植物