くにたち散歩
五月晴れの日、国立(くにたち)の大学通りをぶらぶらしてきた。
ここには、私が卒業した小学校がある。
40年前に通っていたこの学校が、私は嫌いだった。
ひねくれた子供だったので、
『子供らしい子供を育てるための情操教育』を実践する学校の方針と、
個性豊かで教育者としてのプライドが高い先生方になじめず、どうにも居心地が悪かった。
しかし、思い出したくもないほど嫌いというわけでもなく、そこは子供のこと、
ものすごく楽しい!と我を忘れて遊んだ放課後の校庭や、
宝の山だった図書室などは、文句なしに懐かしい。
(ちなみに、同じ学校に通っていた兄は、当時から今に至るまで母校が大好きだ)
人生に疲れた小学生(私のこと)を癒してくれたのが、通学路でもあった『大学通り』だった。
特に、新緑の頃やイチョウの葉が舞い散る頃、
学校が終わってこの道を歩く時の解放感といったら!
駅まで1キロの道のりを、友達と行きつ戻りつしながら、登校時の倍の時間をかけて歩いた。
幅の広い石畳の歩道を遊び場の延長にしても、誰の迷惑にもならないほど、
午後の通りは人影もまばらだった。
一橋大学の囲いに沿って、じゃんけん遊びをしながら歩いていると、
カツカツとひずめの音を立てて、乗馬服のおじさんを乗せた馬が通って行くこともあった。
それくらい、のどかな場所だったのである。
卒業してから長いこと足が遠のいていたが、その間も、この町は繰り返し私の夢に出てきた。
きっと、覚えている夢だけでなく、目覚める前に忘れてしまった夢にも、
たびたびあらわれていたのでは、と思う。
だから、いくら時が流れても、この町が格別親しく感じられ、心が惹きつけられるのかもしれない。
ここを訪れるたびに、場の空気そのものに癒されている。
「よほど、その町と相性がいいのよ。どうせなら住めばいいのに」
と、友人に言われたときは、意表を突かれた気がした。
頭の中に蜃気楼のように浮かぶ町並みが、一気にリアル感を増したからだ。
「東京都国立市」は、言うまでもなく、実際に存在する場所で、
昨今では人気のお散歩コースでもあるが、
「私の国立」は、少しだけ、非現実の世界と重なっている。
今住んでいる町から国立まで、バス一本で行くことができる。
夢が帰って行く場所がこんなに近くにあるなんて、幸せだなぁと思う。
パンとケーキのお店。石畳を模した生チョコがおいしいです^^
骨董屋さんの地下には古着の着物や帯がいっぱい。
ウェディングもできるフレンチ・レストラン。
by mofu903
| 2012-05-12 17:04
| 回想