小さな春の庭
三月下旬、まだ外気に梅の香りが含まれているころだったと思います。
夕暮れ時に近郊の住宅街を歩いていて、とある場所に行き当たりました。
そこには、ほのかな闇に浮かび上がるように白い沈丁花、白い椿、雪柳が。
木々の足元には、純白の水仙とヒヤシンス、スノーフレーク、
そしてぽつぽつと咲き始めているアネモネも、白。
個人のお宅には珍しいほど完璧な、そこはホワイトガーデンだったのでしょう。
会ったこともない人なのに、庭の主の面影がしのばれ、
それと同時に、かすかな寂寥感が胸をよぎりました。
傍らにあったはずの家が壊されて、雨ざらしの土台だけになっていたからです。
手入れのされていない木々は伸び放題、数本は枯れたまま……
球根類は分球して、あちこちで気ままに花を咲かせていました。
このささやかなホワイトガーデンが空き地になってから、どのくらい経ったのかしら。
年年歳歳花相似たり
年年歳歳人同じからず
ふと、漢詩中の有名な一節を思い出すほど、格調高かったそのお庭に比べ、
すっかり方向性を見失ったウチの庭。
年ごとに、花屋さんや、通販のカタログで目に止まったものをせっせと運び込んでいるうちに、こんなに満艦飾になってしまいました。
住み始めた当初は、ホームセンターで買った花苗をホイホイと植えつけるだけだったのに、
徐々に「育てる」ことに興味が出てきて、
ある年は一年草を種から咲かせることに、ある年は宿根草を増やすことに夢中になり、
また挿し木にも手を出して失敗を繰り返し…
しかも、前の年の球根やこぼれ種の芽が、思いがけないところに顔を出したりして、
さらに調和を乱し…
そんないきさつで、今はこんなふうになっています(^_^;)
気持ち的には、先程のホワイト・ガーデンのように、ストイックなまでの美意識に憧れるのですが、どうしても一本に絞りきれない私の性格ゆえ、統一感のある庭は、たぶんいつまでも「憧れ」のままでしょう。
去年の秋。
チューリップの球根を買う時に、「今年こそ、色おまかせのお買い得品はやめよう」と決意していたのに、結局、またやってしまいました。
『サプライズ』 と 『お買い得』 の両方に、つい、フラッとしてしまう私が悪いんです。ええ。
しかし、こちらのチューリップは、
珍しく気張ってブランド買い(?)したにもかかわらず、こんな結果に。
ガボータ(渋赤と黄)はふつうにパッケージ写真の通りでしたが、
もう一種のスプリング・グリーンは…清楚なホワイトのはずが、なぜか、鮮やかなオレンジ!
……間違えて植えたわけではありませんの。
これこそ本当のサプライズでした(笑)
by mofu903
| 2012-04-17 21:50
| 季節