人気ブログランキング | 話題のタグを見る

英国の水仙


ダフィー・ダウン・ディリーが町にやってきた

黄色いペチコートに緑のガウン着て


英国の水仙_b0209810_11251824.jpg


庭の水仙が咲き始めると、
  『マザー・グース』  の中に収められているこの小さな詩を思い出す。

ラッパ水仙を擬人化して歌っているのだが、黄色いペチコートと緑のガウン(長いドレス)
というのは、トップスとボトムスの位置が逆のような気がする。

上着が黄色、スカート部分が緑となるはずなのに、変だなぁ、
とずっと思っていたのだが、
今回こんな挿絵を見つけて、なるほど! と納得。

英国の水仙_b0209810_10571095.gif




美女を花にたとえるのはありがちだが、そのあらわすところは、
妖艶、優美、気品、あるいははかなげな風情などであることが多い。

『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花』などと讃えられる美女は、
完璧すぎて近寄りがたいが、
「ダフィー嬢ちゃん」は元気いっぱい、野の香りをふりまきながら春の訪れを謳歌する、
気さくな女の子を連想させる。


桜の薄紅を日本の春の象徴とするなら、この鮮やかな明るい黄色は、
英国の春=暗く長い冬の終わりを告げる季節、の象徴のように思える。



 桂冠詩人、ウィリアム・ワーズワース(1770~1850)は、
イングランドの湖水地方を散策していたとき、
『一目見ただけで、ゆうに一万本はあると思われる』黄水仙の群生に出会った。
その光景からインスピレーションを受け、代表作のひとつともいえる次の詩を書いた。



「水仙」                   
                          ウィリアム・ワーズワース



谷や丘のはるか高みに浮かぶ雲のように
ひとりぼっちでさまよっていると
突然目の前に黄金に輝くおびただしい水仙の群れ
湖のほとり、木々のもと
そよ風に揺れて踊るがごとく



銀河に輝き瞬く星々が連なるように
入り江に沿って果てしなく続く一本の線となって
一目見渡せば一万本もの花が
頭を上げ楽しげに踊っていた



湖岸では波もともに踊っていたが
その歓喜は花に及ばず
かくも陽気な仲間の前で
詩人の心がときめかぬわけがない
しかしいつまでも見飽かぬその眺めが
僕にどれほどの恩恵をもたらしたか
気づくのはもっと後のことだった



空しさと寂寥に胸をふさがれ
寝椅子に横たわっているときに
孤独の賜物である内なるまなざしに
これらの花影がしばしば鮮やかによみがえり
僕の心を喜びで満たし
心浮き立つダンスへといざなうのだ


                               
                                    (拙訳のほどお許しください)



 今から200年前、高名なロマン派の詩人が目にしたという、この幸せな美しい情景を、
春ごとに思い描き、憧れずにはいられません。


英国の水仙_b0209810_10573568.jpg




The Daffodils
              William Wordsworth


I wander'd lonely as a cloud
That floats on high o'er vales and hills,
When all at once I saw a crowd,
A host of golden daffodils,
Beside the lake, beneath the trees
Fluttering and dancing in the breeze.

Continuous as the stars that shine
And twinkle on the milky way,
They stretched in never-ending line
Along the margin of a bay:
Ten thousand saw I at a glance
Tossing their heads in sprightly dance.

The waves beside them danced, but they
Out-did the sparkling waves in glee:
A poet could not be but gay In such a jocund company!
I gazed - and gazed - but little thought
What wealth the show to me had brought.

For oft, when on my couch I lie
In vacant or in pensive mood,
They flash upon that inward eye
Which is the bliss of solitude;
And then my heart with pleasure fills
And dances with the daffodils.
by mofu903 | 2012-04-03 11:33 | 植物