予期せぬ訪問者

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 私が子供のころ、包丁砥ぎは、一家のあるじの仕事だったように思う。
たとえ「男子厨房に入らず」の旦那さんであっても、
これだけは「男の仕事」として認めていたふしがある。


 私の父も例外ではなかったが、幼い娘の目から見ても、手際がいいとは言えなかった。
砥石の上をぎごちなく往復する包丁を見ながら、いつ手を切るかと心配でたまらなかった。

 仕上がった包丁を見ても砥ぐ前とほとんど変わらず、
どのへんが改良されたのか不思議だったが、
母は、「パパに砥いでもらうと、さすがに切れ味が違うわー」と上手におだてていた。
よほど自分でやりたくないのだな、と思ったものだ。


時は流れ、兄は包丁を砥がない。夫も砥がない。
息子に至っては、砥石そのものを見たことがないとすら思われる。
主婦にとってのせっかくの良き習慣はすたれ、代わりに、
「軽く」「スピーディーに」刃物が砥げるグッズが、キッチン用品売り場に並べられている。
私も今までに何種類か買って試したことがあるが、どれも今一つ。
鈍った包丁で玉ねぎをみじん切りにするのは、罰ゲームに等しい。


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この問題は、わが家にプロの砥ぎ屋さんが来るようになって、たちまち解決した。
サトーさんに、シャッシャッ、とリズミカルな音をたてて砥いでもらうと、
鈍った鋼の刃が、本来の魂をとりもどす。

 キャベツの千切りもゴボウの笹がきもドンと来いだし、この砥ぎたての包丁があれば、
普段は頑張っても50点程度の「針生姜」だって、80点はもらえそうだ。

 二ヶ月に一度来てくれるサトーさんに、今日も愛用の包丁を二本頼むことにした。
家の前の路上で作業をするので、仕上がったらいつも、
玄関先まで持ってきてくれることになっている。

 しかし、サトーさんが仕事を終えて玄関チャイムを鳴らした時、私は二階で、
最近買ったwiiフィットに熱中するあまり、これをころっと忘れていた。

 
 代わりに、それまで一階の書斎でテレビに釘付けになっていた夫が応対に出たのだが、
その辺の事情をまったく知らず、確かめもせずに勢いよくドアを開けた。

 そこに、大マスク・スキンヘッドの男が、
ギラギラした刃物を左右の手に提げて立っていたのだから、
ただでさえ物騒な世の中、驚愕するに決まっている。

 
 気づいた私が急いで階下に降りて行ったので、
最悪の事態(セ○ムの非常ベル通報、あるいは夫が卒倒)はまぬかれたものの、
ただならぬ形相で凍りついた夫を見て、サトーさんも動転したに違いない。

 砥ぎ料1000円のはずなのに、
「2本で100円になります~」なんて、言い間違えたりして。
一見コワモテだが、家庭菜園が趣味で気の優しいサトーさん。

驚いたり、驚かせたり、本当に申し訳ありませんでした。





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wiiのアバターです~
カンフーをしている私たち、真中が私、左が夫、右が娘。
けっこう似ているかも(笑)
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by mofu903 | 2012-02-21 20:01 | 家族