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読書好きということ

「ひ~、寒い寒い」
と言いながら起きだして行くと、
防寒用の帽子、大きなマスクをつけた夫と、廊下ですれ違った。
もともと眼鏡使用なので、この3点セットのせいで、どことなく怪しげな人物に見える。
夫は、「ちょっと××まで出かけて来るよ」と、張り切っている。
行ったこともない××駅に、バスと電車を乗り継いで行くほどの用事があるとは、妙だ。
普段はこたつから出られないほど寒がりのくせに。
聞けば、××の図書館に、探していた本のシリーズが全巻揃っているという情報を得たらしい。

はいはい、いってらっしゃい。でも、外は雪だよ……。


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夫の、読書にかける情熱は半端ではない。

これには結婚当初からずっと悩まされてきた。

手ぶらで帰ってきたことがないほど本を買い込むので、必然的に置き場所に困る。
ネダがゆるむといけないので、少しずつ処分していたが、とても追いつかない。
家中が本に占拠されそうになって、一度、私が大爆発を起こしたら、
仕方なく会社の倉庫に運び込むようになった。
溢れた分は通勤用の車に乗せていたので、子供たちから「移動図書館」とからかわれる始末。

子供たちの学校行事に重たい腰を上げる時も、文庫本を手放さなかった。
運動会で、お父さんたちがわが子のベストショットを撮るために、
ラインぎりぎりにカメラを構えて身を乗り出している最中、
夫は校庭の隅の木陰で、読書に没頭していた。


その後、わが家は試練にさらされ、蔵書をすべて売り払わなければならなくなった。
家そのものを手放さねばならなかったから。
リタイア後に、古書店を経営するのが夢だった夫には気の毒だったが、
都合のいい(?)ことに、入院加療中。
買い取り業者さんが来て、一日がかりで査定した本を段ボールに詰め込み、
粛々と運び出して行った。
信じられないほどの冊数だった。



収入の激減にともなって、夫は本を買わなくなった。いや、買えなくなった。
しかし、彼には救世主がいた。市立図書館である。
無料で好きなだけ本が読める上に、予約も購買リクエストも受け付けてくれる。
手に入りにくい資料も、すぐに探し出して最寄りの図書館で受け取れるようにしてくれる。
なにより、本を置くスペースに頭を悩ますことはない。
夫でなくても、図書館、最高! と叫びたくなる。



それにしても不思議なのは、これほど読書好きな人物が、
「ひたすらインプットするだけ」という事実だ。
感想もないし、蘊蓄の披露もない。
婚約時代に、たった一通葉書をもらっただけで、
それ以外に文章を書いたのを見たことがない。
そういえば 手帳の覚え書きを見せてくれたことがあるが、漢字とカタカナだけで、
「ワレ、発熱ス。風邪ナリ」 「△△ニ確認スベシ!」  「妻、オオイニ怒ル」
などと書いてあったので、びっくりした。
この『雨ニモ負ケズ』調、現代人とは思えない。奥が深すぎる。

……夫はもしかして、読書が好きというより、<本>が好きなのかもしれない。



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私自身は、しばらく読書から遠ざかっていたが、最近、少しずつ読み始めた。
難解なものは頭がついていかないので、もっぱらジュブナイル一辺倒。
『クロニクル 千古の闇』というシリーズを借りてみたら、これが非常に面白い。
久しぶりの本格冒険ファンタジーにすっかりはまってしまった。



 寒いキッチンに長く立ちたくないので、
この時季は、手間いらずであとかたづけも楽な、煮込み料理にすることが多い。
そのため、自然と夕食後の時間が増えた。

 皿洗いを済ませ、こたつで読みかけの本を開くと、
隣で夫も、向かいで娘も、それぞれの本を開く。
夫は時代小説を、娘は私がすすめた『千古の闇』を、私は宮部みゆきさんの『ばんば憑き』を。
家族そろって一つのことをする習慣がほとんどなかったわが家だが、
この「読書の時間」はなかなかいい感じだ。

 こたつでの、お好み読書会は、真冬の夜の定番になりつつある。







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キャッ! だ、だれ? 


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なーんだ、くまさんでしたか(笑)






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by mofu903 | 2012-01-20 12:31 | 家族