また、やっちゃった。

 街で久しぶりに、年下の知人・猫谷さん(仮名)を見かけた。
あちらも私に気づいて、「じゃれさ~ん」と笑顔で手をふってくれる。

 切りかえのないゆったりしたコートに、かかとの低い靴。
ちょっと反り返りぎみに歩いて来る、その原因については、
すでに別の知人・Cさんから情報が入っていた。
『おめでたですってよ♪三人目のお子さん』
という言葉どおり、猫谷さんのふっくら幸せそうな様子を目のあたりにして、
こちらも嬉しくなった。

 近づいてくるのを待って、さっそく祝福の言葉をかける。
「良かったわね、おめでとうございます!」

すると彼女は、心なしか笑顔を曇らせた。
「え~と……?」声にも、困惑の響きがある。

(まずい、ちょっと先走っちゃたかな)
と、反省しかけた瞬間、とんでもない勘違いに気づいた。

 Cさんが言ってた「おめでた」は、ネコタニさんじゃなくて、
去年、自治会で知り合ったネコタさんのことだった! 

……と、いうことは、猫谷さん、しばらく見ないあいだにふくよかになられただけ……?
どうしよう、今さら「おめでとう!」をひっこめるわけにもいかないし――

 固まった全身が風化して、ざらざらと崩れ落ちる気がした。
猫谷さんは依然、微笑した「え?」のまま。
あたまが破裂寸前になったとき、天啓のように苦肉の策がひらめいた。

「お、お宅の、上のお嬢ちゃん、今年ご入学でしたよね?」
すると、すぐに納得してくれて、猫谷さんは全開の笑顔になった。
「去年だったんです。今年はもう二年生になるんですよ」
「まあぁ、そうだったの! よそのお子さんって本当に大きくなるのが早いわ~」 
それから少し立ち話をして、猫谷さんは
「また、ゆっくりお茶でも」と、にこやかに、去って行った。

今回は危ういところを切り抜けたが、
前例から言っても、またしでかさないという保証はない。
b0209810_23262889.jpg
早とちりを治す薬がほしいよぅ、マジで。
[PR]
by mofu903 | 2011-04-12 23:40 | 日常