桜の道

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 図書館での調べものに疲れてしまったので、一息入れようと、近くのカフェに入った。

 窓ごしに見渡せる桜並木の下で、若いお母さんが娘さんの写真を撮っている。
 
小学校の入学式にさきがけて、桜をバックに記念撮影を、ということらしい。
今年は桜の開花が遅かったが、今日のあたたかさで一気に八分咲きになった。

 よそいきを着て、真顔でカメラに向かう少女の、ランドセルの色に目がうばわれた。
鮮やかなターコイズ・ブルー。

 昨今はカラーランドセルも珍しくないと聞いていたけれど、
あんなお洒落な色まであるのね。
私が小学生の頃は、ランドセルは黒か赤に決まっていた。
今だったら、あの子みたいに好きな色を買ってもらえたのに――。
そう、この桜みたいに、優しいピンクが良かったな……。

 いい年をして、一年生をうらやんでいる自分が、可笑しい。

 女の子が突然、笑顔をはじけさせた。
ふたりを迎えに来たのだろう、父親とおぼしき人が並木にそって歩いてくる。
少女が駆け寄って行って、その腕に飛びつく。

 
 子を真ん中にして、手をつないで帰っていく家族を見送りながら、
私は自分の入学式を思い出していた。
 新調のスーツを着た若々しい母は、子供ごころにも自慢だったっけ。
そして私たちの隣には、やっぱり若くてたのもしい父がいた。

 思い出すうちに、切実に戻りたくなった。あの一日に。
素敵な色のランドセルがなくても。
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by mofu903 | 2011-04-05 16:07 | 季節