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COLORS

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いつもの散歩道を歩く。
丘陵の雑木林には、国木田独歩が百年前に書いた「武蔵野」の面影が、
まだあちこちに残っている。


びっしりと枯木に覆われた丘の、くすんだセピア色が先週よりも濃くなっていて、
水彩のローズを二、三滴たらして絵筆で混ぜたように、
ほんのりとした紅を含んでいる。
木々の枝先についた芽がいっせいに赤みを帯びてきたのだろう。
ほんのわずかな変化でも、何万、何十万と集まると壮観だ。


枯れ芝の斜面には、とろりとした蜜色の日ざしが流れている。


その日だまりに寝転んで、鳥の声に耳をすませているうちに、
かりそめの穏やかな光はすぐに移ろい、冷たい風に身を起こすと、
残照をあびた向かいの丘は、さらに濃いばら色に変わっていた。


こうして、
教会の聖堂のようにおごそかでストイックな雰囲気をたたえていた風景は
日ごとに和らいでいき、
閉じ込められていた色彩が、ひとつ、またひとつと、解き放されていく。
by mofu903 | 2011-02-25 11:24 | 季節