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たかが宛名、されど宛名

 
久しぶりに手書きの手紙を書いた。先方は非常に達筆である。

本来ならタイプ文字の方が気楽なのだが、目上の人なのでそうもいかず、

とっておきのゴージャス模様の便箋をひっぱりだした。
 
久々のペン字に苦心しつつも、何とか書き終える。
 
さて、便箋とおそろいのゴージャス封筒は、引き出しの中に三枚。

これなら、余裕だ。
 
 

が、宛名を書いてから、はた、と気づいた。

相手の名前は旧字体が本当だった。

ま、いいか、という思いが一瞬頭をよぎったが、

いや、失礼があってはなるまいと、潔く破って書き直した。


 二枚目、だららんと右下がりになった番地の数字が、見れば見るほど間抜けている。

考えた末、まだ一枚あるし、とこれも破った。

 そして字の形、字配り、細心の注意を払って完璧に書き上げ、

自分の住所を書こうと封筒をひっくり返したとたん、あやうく自分までひっくり返るところだった。
 
  
たかが宛名、されど宛名_b0209810_015922.jpg
上下が逆……。
 
 バカ、バカ、バカ! 

おのれを目茶苦茶ののしり、やっと探し当てた百均の封筒に書いた文字は、

いじけきっていた。
by mofu903 | 2010-09-15 00:32 | 日常