<   2014年 07月 ( 1 )   > この月の画像一覧

b0209810_21522811.jpg



腰を痛めてから、買い物をほとんどネットに頼っているうえに、お中元シーズンに入ったこともあって、

配達の人が頻々と訪れるようになった。

私が手を離せないときは、母が受け取ってくれるのだが、その際に、「ご苦労さまー」を

大盤振舞いするので、ちょっと困っている。

上から目線に聞こえないかと、気にしてのことだが、

(大おばばの言うことだし、先方さんも聞き流してくれるだろう)と思い直した。

いちいち母に苦言を呈すのも億劫だし、一度や二度言い聞かせたところで、どーせわかりゃしないのだし。



昭和の末ごろまではごく普通に使われていた「ご苦労様」は、近年、衰退の一途をたどっている。

今や、ビジネス界ではタブーとまで言われ、特に、上司や先輩に対して使ったら、

社会人失格のレッテルを張られてしまうというから、うっかりできない。


「ご苦労様」に代わって台頭してきたのが、「お疲れ様」だ。

すでに挨拶代わりに使われるほど、人口に膾炙しているが、私は、この挨拶代わりの「お疲れ様」が、

あまり好きではない。

仕事関係の電話を取ったとたん、「お疲れ様です!」と威勢よく言われると、

今風の挨拶とわかってはいても、己の根性の悪さが災いして、素直に受け入れることができない。

特に、思うように物事が進んでいないときは、

「ふん、どうせ私はよろよろのよぼよぼだよ。いいねぇ、若いもんは」とか、

「ほんとに労わってるおつもりかえ?」などと、憎まれ口の一つも言ってみたくなる。


「ご苦労様」も、「お疲れ様」も、接頭語+名詞+様であることに変わりないのに、

どうして「苦労」はダメで、「疲労」は良いのか。

「うむ、ご苦労であった」と、悪代官がふんぞり返っているシーンが、

われわれの脳に刷り込まれてしまったからだろうか。

あるいは、現代人がより多く背負っているのが、苦労ではなく、疲労だからか。


「ご苦労様」と構成が同じ言葉は結構ある。

「ご馳走様」「ご愁傷様」「お世話様」「お粗末様」「お気の毒様」などなど。


学生の頃、犬に追いかけられて転んだとかで、足を引きずっている先生に、友人が、

「カワイソウでしたね」と言って、逆鱗に触れた。

先生曰く、「ばかものっ!!そういう時は、『お気の毒様でした』と言うのだっ!!」

運悪く隣にいて、一緒くたに怒鳴りつけられた私も、この叱責を胸に刻んで今日まで来た。

とはいうものの、美川憲一さんのヒット曲『さそり座の女』の歌詞、

「♪おきのどっくっさ~ま~笑うがいいわ~」のように、皮肉とも受け取られかねないので、

この<様系>も、取り扱い注意である。

ごくたまに耳にする、「お御馳走様」もいただけないが、

このあいだは、メールで、「お有難う様~」と返され、目玉がポーンとなった。



もうだいぶ昔の話だが――

娘が、手作りの父の日カードを幼稚園から持ち帰ってきた。

「見ていいよ」と、得意そうに言うので、夫より一足先に見せてもらった。

開いてみると、

【ぱぱへ。ちちのひおめでとう】

と、クレヨンでたどたどしく書いてあった。

(おめでとう、って……ここは、「ありがとう」じゃないかね?)

多少の違和感を覚えつつも、ほほえましさに包まれてカードを閉じたら、裏面に、こう付け足されていた。


「あと、ごくろ」





b0209810_21524653.jpg

[PR]