ムードブレイカー


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寝起きの頭で、ふらふらしながら庭に出て、そよ風に揺れる花を眺める。

水遣りのついでに、テーブルに飾るための小さな花束を作る。

(朝の庭で、小鳥の声を聞きながら、テーブルに飾る花を摘むワタクシ♪)と、

脳内で自分の姿を著しく美化しているので、たったこれだけのことが、ほんのり幸せに思える。



今朝も、花盛りのオルラヤとローズマリーを摘んだ。

香りをちょっとかいで、うっとり気分でリビングに入ろうとすると、夫の興奮気味の声が響き渡った。


「もやし、消費期限が昨日だった!」


続いて、本体があたふたとやってくる。

呆然と立ちつくす私の前で、夫は、バッとオーバーアクションでサングラス眼鏡をはずし、

もう一度もやしの袋を確かめ、愕然とした表情になった。

「うわっ、おとといだった!」

ついで、私に視線を戻す。小っさい目には、悲壮感が漂っている。


「蕎麦も、昨日までだった……」

すっかり鼻白んで、「おはようぐらい、言おうよ」と言うと、

「だって~なかなか起きてこないから~」



私と違って早寝・早起きの夫は、早朝五時から暇をもてあましている。

私が顔を見せたら、蕎麦の一大事について報告しようと待ち構えていたところへ、

追い打ちをかけるように、もやしがイカレているのに気づいてしまい、一大事が二大事になって、

「おはよう」どころではなくなったらしい。

まるで、帰ってくるなり母親のもとに駆け寄って、「××君にいじめられた~」と言いつける小学生なみ

である。



色は似ているが、ストライプの太さも幅も明らかに違うスーツを、上下の組み合わせを取り違えて

着ていってしまうほど無頓着な夫だが、こと「期限」と名のつくモノに関しては、

つねに細心の注意を払っている。

この注意深さを、なぜ発言するときに活かせないのか、不思議でならない。



温泉と避暑地で名高い那須高原のお土産を持ってきてくれた友人に、

「あの有名な、『那須の猿岩石』を見ましたか?」

友人は、一瞬、あっけにとられていたが、夫の言い間違いに気づいたとたん、

笑いをこらえて悶絶しそうになっているし、私は脱力してしまって、

「それ、『★殺生石』だから」と、訂正する気にもなれなかった。




さっきも、「五本足ソックス専門の店があるんだよ。五本足ソックスも有名になったものだな……」

と、わけのわからない感慨に浸っていた。


確かに、夫は日頃、五本ソックスを愛用しているが。



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by mofu903 | 2015-05-27 08:38 | 家族