お出口まで

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「鷹揚」というのは、いい言葉だ。

・(<鷹が悠然と空を飛ぶように>小さなことにこだわらずゆったりとしているさま。
   おっとりとして上品なさま)



鷹揚な人になりたい。

午前10時。開店早々のデパートの中を歩きながら、強く思った。


どの売り場の前にも店員さんが立っていて、マナー本から抜け出したようなお辞儀で迎えてくれる。

にこやかだが控えめな表情、上体の傾け方、首の角度。

まるでエレガンスの神様が降臨したかのような美しい眺めは、見ていて気持ちいいが、わが胸中は複雑だ。



この光景、何べん遭遇しても慣れることができず、毎度、自分がとるべきリアクションを模索している。

正解のひとつとして、「にっこり笑って、鷹揚に頷き返す」なんていうのはありそうだ。

しかし、この「鷹揚」が身についていないから、

微妙な薄笑いを浮かべ、そそくさと伏し目がちに通り過ぎることになる。

もし、目が合ってしまったら、条件反射的に、ぺこしゃくとカッコ悪いお辞儀を返してしまいそうなので。



シャネル、ブシュロン、ショーメ、ブルガリ…ずらりと並んだハイブランドショップの前で、

自分よりずーっと優雅で洗練された皆さんに次々と頭を下げられると、

(着物こそ着ていないが)たもとで顔を覆いたくなる。

心の中では、「やだよぅ、おまいさんたら!」と叫んでいる。

あたしゃ、ここを通り抜けるだけ。どうせ、たいしたものも買いやしないんだから。


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ことほどさように貧乏性の私が、きょうび、もっと困惑していることがある。

服や化粧品などを買ったときの、『お出口までお持ちいたします』が、それだ。

たかだか数百グラム程度のもの。しかも、出口まで数メートル。

そんな大仰なことは、これっぽちも望んでいない。

「いえ、自分で持ちますから結構です」と言いたくてたまらないが、先方がこう言ってくれるからには、

なんらかの事情(たとえば、ワタクシが売りましたアピールとか)があると思うと、

一概に断ることもできず、「すみませんねぇ(汗)」と書いた紙を背中に貼りつけたいくらい

こそばゆい気持ちのまま、店員さんを従えて、出口まで歩くことになる。



その10秒後、ショップの前で、買った品を受け取る私。

受け取るときも、なぜか無意識にへこへこしているのだから、世話はない。


私としては、なんとも居心地悪いこのサービス。断っていいのかしら…(´u_u`)
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