晴れたら、金の鈴

b0209810_11481887.jpg



最近は、ゆるきゃらブームだが、そのずーっと昔からみんなに親しまれている、
雨につきもののキャラクターといったら?
 
ほら、丸い頭、色白(?)のあの子……


テルテル坊主?  ピンポ-ン!



幼い頃、父が作ってくれるテルテル坊主の効果はてきめんだった。

家族のピクニックとか、学校の遠足とかの前日には必ず、

これがいくつも窓辺に並んで揺れていた。

それを見上げながら、歌を歌った。

そうすれば、テルテル坊主たちがいっそう、力を発揮してくれるような気がしたのだった。



♪てるてる坊主、てる坊主
明日、天気にしておくれ
いつかの夢の空のよに、晴れたら金の鈴あげよ

♪てるてる坊主、てる坊主
明日、天気にしておくれ
私の願いを聞いたなら、あまいお酒を、たんと飲ましょ


                     作詞・浅原鏡村
                       作曲・中山晋平  
                                      



父のテルテル坊主は、丸めた紙にさらに白い紙をかぶせて、

根元をぐりっとひねっただけの不恰好なしろものだった。

それでも、全知全能の神でさえ手を焼きそうな天候の調整を、

<パパが作った>小さなひとがたに託して、私は翌日の晴天を疑わなかった。


b0209810_11491731.jpg



(やっぱり、晴れた!)

(パパのテルテル坊主は、すごい!)

どんなに急いでいても、出がけに坊主たちに顔を書いてやることだけは、忘れなかった。

望みをかなえてくれたのだから、そうしてあげるのが作法だよ、と祖母に教えられていたからだ。

お気に入りの赤いリュックをしょったまま、ペン先の滲みを気にしつつ、

あわただしく目鼻をつけてやったことを思い出す。



しかし、毎度毎度、うまくいくわけもない。


どんよりした、灰色の記憶もある。

窓の外は雨がじゃあじゃあ降っていて、テルテル坊主が申し訳なさそうに首を垂れている。

その下で、私は地団太を踏んでいる。

「うそつき~、うそつき~!」と泣きわめきながら。

全身から発する怒りは、不甲斐ないテルテル坊主と、そんなへなちょこを作った父と、

そして、理不尽極まりない「世界」へと向けられていた。



小学校の一、二年生ともなれば、期待は裏切られることもあるということは、

すでに知っていたはずだ。

だが、この朝の悲憤は別格だったらしく、今でも鮮明に思い出せてしまう。

お出かけが取りやめになったことへの落胆より、

「パパは、特別な力なんてもってなかった」

という絶望のほうが大きかったのかもしれない。





年月が経って、私も子供たちと一緒に、テルテル坊主を作るようになった。

「一緒に」というところがミソで、それなら、たとえ雨が降っても自己責任である(笑)

わが子には、科学への探求心と、不思議な世界を信じる心との、両方を忘れないでいてほしいなぁと、

未熟な母親なりに、当時はそんなことを考えていた。



(その結果……
息子は、理性を必要とする職業につき、結婚も間近というのに、いまだにお化けを怖がっているし、
娘は、現実を見据えることなく夢のようなことばかり言っている)




梅雨入りの発表を聞いたのは、一昨日だったかしら、その前だったかしら。

今日は太陽が颯爽と顔を出して、早々に「梅雨の晴れ間」となった。

窓の向こうに広がる空には、もう夏がきざしている。

目の前を、ついっとツバメが横切って行く。



b0209810_11532773.jpg





*******

一説に、てるてる坊主の原型は、中国の『掃晴娘』(サオチンニャン)であるといわれています。

『掃晴娘』は、空の雨雲を掃き清める仙女のような存在で、

手に、箒と箕(キ・ちりとりのようなもの)を持っているんですって^^
[PR]
by mofu903 | 2013-06-01 11:59 | 回想