ききみみずきん

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去年★キジバトの鳴き声について書いたことがあるが、今春また、新人(?)がデビューした。

妙にくぐもったガラガラ声は、まぎれもなくキジバト特有のものだが、明らかにテンポが異なる。

通常のキジバトの鳴き声は、デデッ・ポーポーという2音節になるはずだ。
    
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(wikipedia)

しかし、今年の新人は、デデッ、デデッ、デデッという、息せききった鳴き方をする。

そして、このデデッが、「キアイダ」に聞こえる。


起き抜けだったから、まだ脳がぼんやりしてるのかしらと思い、

頭をぶんぶん振ってから再び耳を傾けたが、やっぱり、

「気合いだ!気合いだ!気合いだ!気合いだ!」

と、連呼している。


あとから、のたのた起きてきた娘に、この出来事を報告したが、「テレビの影響でしょ」と一蹴された。

ひと月ほど前に、本家・アニマル浜口さんの、「『気合いだ!』100連発」を、一緒に見たから、

娘はそれを思い出したのだろう。

「違うってば!本当に言ってたのよっ!」

と、むきになって主張するほどのことでもないので、その場はおとなしく引き下がったが……


本当に言ってたんだってば!!щ(゚Д゚щ)



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むかしむかし、あるところに、心根の優しいお爺さんがいました。

困っている仔狐に親切にしてあげたので、

そのお礼として、母狐から不思議な頭巾をもらいました。

それは、「ききみみずきん」といって、かぶると、

鳥や動物、自然界に生きるものたちの言葉がわかるのです。


                                     (日本の昔話より)




物語の世界に分け入るたびに、少女の私が欲しいものは、どんどん増えていった。

それでも、オズの魔法使いの主人公・ドロシーの赤い靴と、

この「ききみみずきん」は、常に、欲しいものリストの上位にあった。

「ききみみずきん」は、大人になった今でも、憧れのアイテムだ。

彼らの言葉がわかったら、どんなに楽しいだろう。





私が中学生の頃、わが家には大型の秋田犬がいた。

その犬・ボスは、ときどき人がしゃべるような喉声を発した。

うぉ~わぁ、とか、ああうぉ~い、とか、

だいたいそんな感じの、酔っぱらいのおっさんがクダをまいているような声だったが、

まさか、それとまともに会話をする人間がいようとは――。



ある朝、私が学校に行く支度をしていたら、外で、ボスが、

「おぁおう」と鳴いた。

朝ごはんの催促と思われた。


飼い犬の、その手の声はよく耳にしていたはずなのに、

その朝の母は、聞き耳頭巾を装着していたらしい。

あろうことか、 「はい、おはようございまーす」 と返事をしつつ、

レンジの火を消してお弁当づくりを中断し、そそくさと台所から出てきた。

さらに、呆然としている私を押しのけてダイニングの出窓を開け、ぐいっと身を乗り出した。

庭を囲っている生垣の向こうを透かし見ている母の手には、まだフライ返しが握られたままだ。

「変ね。こんな朝早く、どなたかしら?」

「はぁ??」と、私。

裏の犬小屋から、再び、空腹を訴える声が響いた。

「おぅわぁくぅ~ん」

「大和田君(父の仕事を手伝っていた人)に、ご用ですか~?大和田は、まだ来ておりませんがー」

「うぉお~ぃ」

「あのー、まだ、来ていませーん……どちらさまぁ?」



 ……笑うよりもドン引きしてしまった娘(私)の気持ち、わかってもらえるでしょうか(つω-`)



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このあいだの新人鳩がまた飛んで来て、隣家の滴るような柿若葉の奥で鳴き始めた。

「キアイダ、キアイダ、キアイダ、」


ちょうど、傍らでお茶を飲んでいた母に、聞いてみた。

「ねえ、あの鳴き声、何て言ってると思う?」



「……何か鳴いてるの?なにも聞こえないけど?」



思えば、母が愛犬とガチで会話した時から、40年の月日が流れていた。

ききみみずきんどころか、母の日のプレゼントは、補聴器になりそうだ。


なんだか、切ない。


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by mofu903 | 2013-05-09 10:55 | 家族