カウント一族

幼児向けのテレビ番組、『セサミ・ストリート』をご存じですか?

登場するキャラクターのグッズを見たことがある方も、多いのではないかしら。


エルモやビッグバード、クッキーモンスターなど、ユニークなキャラクターが目白押しの同番組の中でも、

カウント伯爵は、ヨーロッパ訛りの強い英語と、ドラキュラそっくりの風貌で異彩を放っています。

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カウント伯爵 Count von Count

素性: 故郷はトランシルバニア。アメリカのペンシルバニアにやってきた。人里離れた豪華な古城に、
    蝙蝠たちと住んでいる。


外見 :顔色は紫。黒髪はオールバック。黒い顎鬚。尖った耳と牙。
    黒いタキシードに、ダークグリーンのケープ。


趣味: 数を数えるのが大好き。蝙蝠、自分のくしゃみ、雨音…何でも数えてしまう。
    数え終わると「はっはっはっは」と笑い、雷が轟き稲妻が光る。


(http://www004.upp.so-net.ne.jp/mop-pot/vamp11/vamp_no12.htm )





自称・カウント一族の私が、庭で何かを数える時間が伸びた。 

春になったからだ。

黄色い水仙の蕾が17個。

チューリップの芽は、こっちに25個。あっちに20個。

椿に来ているメジロは、動きが早くて数えられないが、葉の茂りが6か所揺れているから、たぶん6羽。

もっと暖かくなったら、野菜の種をまいて、芽の数、花の数、そしてまだ青い実の数を数えよう。

その楽しみを思うと、自然と顔がニヤけてくる。

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これは母から聞いた話だが、私が赤ん坊のころ、うちにいた姉やさんは、

一瞬にしてものを数え上げる能力の持ち主だったらしい。

おもに、この力が発揮されたのは、おつかいの時だった。

「××、一山○○円」と書かれて、八百屋の店先に並べられたザルの中から、

たとえひとつでも中身の多いものがあれば、すかさずそれを見つけて買ってくる。

「××」が、小粒の青梅であっても、見誤ることがなかったというから、すごい。


姉やさん自身もそれが自慢で、ときどき「角砂糖の数あて」をして、みんなを興じさせた。

30個程度なら、一瞥で正しい数を言い当てたという。

彼女のような人は、カウント一族のサラブレッドといえるだろう。




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去年の秋。

国営公園に行ったら、広場でチューリップの植え付けの準備が始まっていた。

芽出し球根がびっしり入ったケースが、トラックで大量に運び込まれて来て、

何人ものスタッフさんが、せっせと荷卸しをしている。

広場の一角に並べられたケースの数があまり多いので、つい興味をひかれて、

近くで休憩していたスタッフさんに尋ねてみた。

「このチューリップ、何本くらいあるんですか?」

「そうですね~、私は今年初めてなのでよくわからないけど、5000本くらいでしょうか…」


「そんなどころじゃないわね」

背後で自信たっぷりの声がした。

振り向くと、初老の女性が、足元のケースを覗き込んでいる。

「にーの、しーの、ろーの、やーの……ほら、ひと箱に50本でしょ、だから――」

スペース一面に広がっているケースを見渡して、

「ちょっと、待ってて。私、数えるのが得意だからね、数えてみましょ」


そう言って、おばさんは、おもむろにケースの数を数え始めた。


約三分後。

呪文のようにぶつぶつと数を唱えながら、それに合わせて首を小刻みに上下させるおばさん。

一心不乱にカウント中。

それから数分後。

体はますますリズミカルに揺れ、いつのまにか人差し指のアクションも加わり、

おばさんのカウント作業はいつ果てるともなく続く。



――実は、ここを通りかかった時点での私の真の目的地は、この先にあるトイレだった。

遮るものもない広場には、冷たい風がひゅうひゅうと吹きつけて、徐々に限界が近づいてくる。


私は、こう言いたくてたまらなかった。


(すみません、数えている最中にこんなこと言ってはなんですが、あのぅ、できれば……

いや、とにかく、早くしてーーー!!)



同時に、私の胸には、ある葛藤が巻き起こっていた。


(『いくつあるの?』なんて、最初に訊いた手前、答えを聞かずに途中でいなくなったら悪いわよね。

こんなに熱心に数えてくれてるんだもの…。でも、直接このおばさんに尋ねたわけじゃないんだし…

そうだ、失礼しちゃおう…)


そろ~りと立ち去りかけたが、途中で思いとどまった。

(カウント道にも、仁義があるっしょ!)と、私の中のカウント魂に諭されたからだ。


ついに、おばさんが厳かに宣言した。

「455個!」 


「おおっ、すごい!ありがとうっ!」

「でも、まだあっちの奥のほうにもあるみたいね。あーあ、目が悪くなけりゃね~」


爪先立って、さらに遠くを見はるかしているおばさんの口惜しげな声を背に、私はすでに駆け出していた。



50個×455ケースは何本のチューリップになるんだろうと思いながら。


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この公園で植える春咲きチューリップは、総計50万株だそうです。
おばさんの目の届く範囲にあったのがそのうちのごく一部で、本当に良かった。





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やっと仕上がった娘用マフラー。
編み目を数えるのが楽しかったわりには、なかなか進まず、とうとう春になっちゃった(^_^;)
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by mofu903 | 2013-03-10 01:56 | 日常