なつかしの菓子

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息子は、スイーツにこだわりがあるらしい。

ピエール・エルメのマカロンや、イデミ・スギノのケーキといった有名どころを、

帰省時に気張って買ってきてくれる。

配色も美しいマカロンの詰め合わせは、レースのハンカチや、きらきらしい香水瓶と同じで、

見ているだけで幸せになれる。


しかし、いったん口に持って行った後は、コンテンツを探し当てなくては、という軽い強迫観念のもと、

自分の貧しい舌を叱咤しつつ、ちびちびかじることになる。


紹介文によれば、<三種のバニラ>が使われているそうだが、三種の違いがまったくわからない。

その隣には、<フランボワーズのジュレ、ライチとローズ風味ホワイトチョコレートガナッシュ>

が、入っているらしい。

濃厚な風味の中に漂う、パリの芳香にときめくも、甘すぎて渋茶がほしくなる。


味オンチの母をもって、息子も張り合いのないことだろう。



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こんな私が、文句なく、「はぁ~♥おいしぃ~」と思えるのが、かりんとうや落雁や甘納豆のたぐいだ。

これも、私がおばあちゃん子だったからでしょう。

学校から帰ると、ランドセルを玄関に放り出して、祖母の部屋に駆けて行く。

「おばあちゃん、お菓子!」が、「ただいま」より先だった。

振るとカラコロ音がする栄太郎の飴缶や、スプーンにからめて渡してくれた水あめも、

しみじみと懐かしい。



実は、行く先々で目にするバレンタイン商戦の白熱ぶりに、少々辟易している。

この時期のチョコレート売り場ときたら、ところかまわず出現するんだもの。

駅の構内、地下街はもちろん、デパートでは、文具売り場だろうと日用品売り場だろうと、

バレンタインの特設コーナーがあちこちにできていて、どこへ行っても、チョコ・チョコ・チョコ。

なんと、某神社の参道にまで!


「あーいやだ。紅白まんじゅうでももらったほうが、よっぽど嬉しい」

と娘にぼやいたら、いつの時代の人?と言わんばかりの、憫笑を返された。


私が生まれた昭和30年代でも、クッキーやケーキはそれなりの種類があったし、

親にねだれば、パーラーでフルーツパフェも食べさせてもらえた。


だが、日本がこれほどの洋菓子天国になるとは、誰が予想しただろう。


華やかな洋菓子勢に押されながらも、健気に頑張っている昔ながらの国民的菓子(?)に、

私は熱いエールを送りたい。

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花屋さんの店先で選んだ苗を、店内で精算してもらって再び外へ出たら、

店の前に、ぽつんと何かが落ちている。

入るときは目に留まらなかったが、個包の菓子の空き袋のようだ。

ポリプロピレン製の小さいピラミッド型で……通常、数粒の甘納豆が入っていたりする。

近寄ってみると、思った通り、ソレだった。

スナック菓子や、グミ、キャンディの空き袋だったとしたら、ありがちな光景だが、

よりによってこんなマイナーなお菓子を好んで食べている人が、どこかにいるんだなぁ。

胸のあたりが、じんわりと暖かくなり、感慨がひたひたと押し寄せてきた。


そうだよね、この甘納豆、おいしいよね……。

私も良く食べるよ。実際、今朝もね――




一足遅れて店から出てきたわが娘が、袋を一瞥して言った。


「これ、落としたの、あなたですよね」


「まさか!何で私なのよ?」


「だって出かける前に、こたつで食べてたでしょ?」


「そりゃ食べてたけど、あれは家の中。第一、こことは1キロも離れてるじゃない」


「甘納豆の空き袋を落とす人なんて、ママ以外、いるわけないでしょ。

きっと、静電気かなんかで服にくっついてたんだよ!」


「……ありえないけどね。ま、私のせいにしとけばっ?」



笑いの発作を起こした娘を置いて、よろよろとその場をあとにしたが、

空き袋を拾うべきだったかなと、今もちょっと反省している。
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by mofu903 | 2013-02-14 17:53 | 日常