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異邦人症候群

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 暑い。 

いい具合に茂っていたマンズナル&西洋朝顔の緑のカーテンが、
いつしか黄色のカーテンになり、今朝見たら、黄変した葉っぱがほとんど落ちてしまっていた。
緑のカーテンに、更に日よけがいるような酷暑は、もうご勘弁願いたい。

私は生来、暑さに弱い。
寒さにも、早起きにも、順番待ちにも、スケジュール表にも、団体行動にも弱い。
つまり「わがまま」なのだが、わがままな自分がほとんどエアコンをつけずに、
この熱気に良く耐えていると思う。


「暑さ寒さも彼岸まで」と言うが、そのお彼岸まで、まだ一ヶ月以上もある。
その間、脳がほとんど機能していないこの状態がずっと続くのかと思うと、
さすがに不安になってきた。

 
 先日、毛先のはねを直そうと、てのひらに取ったスタイリングムースを、
豪快に顔になすりこんでしまった。
気合を入れてメイクした後だったのに。
おかげで、待ち合わせ場所に、すっぴんで駆けつけねばならなくなった。

どうしてそんなことをしたのか、まったく解らない
 
 カミュの『異邦人』ではないが、照りつける「太陽のせい」だとしかいいようがない。
(主人公ムルソーは、人を殺害し、動機について『太陽のせい』と答える)

それを皮きりに、うっかりミスが頻発している。
今日は、汗だくになって茹で上げたそうめんを、ざるに取りそこなって、
すっかり流しに放流してしまった。
まさに、流しそうめん……。



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 日中は、足湯用のバケツに水を張って冷凍庫の氷をざらざら入れ、
両脛まで浸かった状態でキーボードに向かっている。

 ふと、どこかでヒグラシが鳴いているような気がした。
耳を澄ませると、確かに鳴いている。
  遥か遠くの山で。
懐かしい声だなぁ、これぞ、一服の涼……
その声を堪能しようと灼熱のベランダに出てみたら、聞こえなくなった。
え?もしかして、家の中で鳴いてる?

 まぼろしのヒグラシの正体は、キッチンタイマーだった。
セットしたのをすっかり忘れ、さんざん鳴り続けて息も絶え絶えなその音を、
風流がって聞いていたとは……。
案の定、鍋は、黒こげ。


早く涼しくならないかなぁ。
涼しくなったら頭の故障が改善される、という保障はないけれど。






 空から降って来るきらめくような光の雨にうたれて、ここにじっとしていても、
やっぱり耐えられぬほどの暑さだった。
さっきと同じように、すべてが赤くきらめいていた。
砂の上に、海は無数のさざなみに息づまり、せわしい呼吸づかいで、あえいでいた。
私はしずかに岩の方へ歩いて行ったが、太陽のために顔がふくれあがるように感じた。
この激しい暑さが私の方へのしかかり、私の歩みをはばんだ。


          『異邦人』より  カミュ著/窪田啓作訳  新潮文庫

by mofu903 | 2011-08-11 23:46 | 日常