ボーイズ・ライフ
みどり滴るケヤキの下で、少年がふたり、火がついたように言い争っている。
ランドセルをしょっているから、下校途中だろう。
「おまえなんか、勝手にすれば!」
一方が捨てゼリフを吐くなり、相手には目もくれず、決然とした足取りで歩き出した。
よほど腹にすえかねることがあったらしく、
こっちに向かって歩いてくるその子のおでこもほっぺたも、湯にのぼせたように赤い。
口元は、への字に引き結ばれている。
置いてきぼりにされたほうはというと、
半ズボンのポケットに手を突っ込んであとからのそのそついて来たが、
徐々にスピードを上げ、いかにもさりげない様子で、また、連れと並んだ。
かつて男子小学生の母だった身には、この後のなりゆきが、なんとなく気にかかる。
二人のむっつり顔とすれ違ったあとも、そっと振り返って見ていると、
あとから追いついたほうがいきなり口笛を吹き始めたので、おや、と思った。
聞き覚えのあるメロディー。TVアニメのテーマソングだったかしら。
すると、あんなに怒っていたもう一人の子も!
調子っぱずれの口笛は、すぐにそろった。
口笛を吹きつつ、何事もなかったかのように肩を並べて去って行く後ろすがた。
西部劇のワンシーンみたい、と思ったとたん、おかしさがこみ上げた。
女に生まれたことに、95%は満足している私だが、たまにこんな光景に出くわすと、
残り5%が、ちょっと疼く。
by mofu903
| 2011-05-16 09:53
| 人物