忘れもの・もの忘れ

 つがいのキジバトが庭に来るようになってから、かれこれ半年になる。
そのたびに餌をまいてやっていたらすっかり馴れて、
雨の日も風の日も通ってきて、ほとんど我が家の飼い鳩のようになってしまった。 
お腹がふくれると、芝生でのんびり羽を広げ、気持ちよさそうに日光浴している。
こんなに警戒心をなくしちゃって大丈夫かしら、と思うほどだ。

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 しかもこの鳩たち、食事の作法が良くて、
テラスにまいてやる豆や雑穀を、端から順番に、実に几帳面に食べていく。
決して、あっちをつつき、こっちをつつき、と食べ散らかすことがない。

 
リビングの窓越しに鳩たちの姿を認めると、からからと窓を開け、
「ポッポッポ」と呼びながら(キジバトはポッポとは鳴かないが)餌をまくのが、
私の母の日課になっている。
しかし、ときどきは来ているのに気づかないこともある。
そうすると彼らは必ず、テラスにある背の高い植木鉢に止まって、
「ここにいるよ」アピールをするらしい。

 
 今日、買物から帰って一息ついていると、母がいそいそとやってきた。
何か話したくてうずうずしているようだ。

「鳩って利口なのね、驚いたわ」
 
聞くところによると、今日はつがいではなく、雌のほうだけ来たらしい。
窓を開けると、例のごとく飛んできてテラスに降り立ったのだが、
いつもと違って、くちばしにY字型の小枝をくわえていたそうだ。
新築するか、棲んでいるところをリフォームするつもりなのだろう。

 目の前に餌をまくと、しばらく困り顔で(?)考えているようだったが、
とうとうくわえていた小枝を足元に落として、餌をついばみ始めた。

 そのとき電話が鳴ったので、数分ほどその場を離れたが、
戻って来てみると餌はきれいになくなっていて、鳩の姿もなかった。
そして、ここが話のメインらしいのだが、くわえてきた小枝もなくなっていたという。 
帰って行く時、忘れずにきちんと持ち物を回収していったことに、母は感じ入っている。
しきりに「鳥って、頭がいいのね~」と褒めるのを聞いて、
当方、非常に耳が痛かった。


 というのも、さきほどスーパーで買い物をして、レジを済ませた私。
その時点で、意識は、この店のポイントカードに集中していた。
2000ポイントたまったら、2000円引きにしてもらおうと決めていたのだが、
渡されたレシートに打ち出された数字は1950ポイント。

  やった、あと少しだ! 
レシートをにんまりと眺めつつサッカー台の前までいき、
(さすが、ポイント10倍の日をねらっただけあるわ~)
などとほくほくしながら大切なカードを財布にしまっていると、

「おきゃくさま…」の声。
品物満載のカゴを持ったかわいい店員さんが、

「お買い上げのお品、こちらに置かせていただきます」

 きゃっ! 
ポイントの残高に熱中するあまり、買った品物のことをまるっと忘れ、
カゴごとレジ台の上に置いてきちゃったのだ。 
振り返ると、たった今、私が通ってきたレジには数人のお客が並んでいて、
不思議なものを見るような目でこっちを見ている。

 すみませ~ん、ありがとございま~す、
あわてて店員さんにお礼を言いながら、顔から火が出そうだった。
生肉、冷凍食品、洗剤、卵……めくらめっぽうマイバッグに放り込み、
その場を逃げ出してきたのだが、
よりによって、鳩に追い打ちをかけられるとは。

『賢い鳩と愚か者』

なぜか、イソップ物語的なタイトルまで頭の中にぽっかり浮かんできて、
ますますへこんだ。
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by mofu903 | 2011-04-09 07:25 | 動物