幕間
一つの季節が終わる頃の、あの物憂いセンチメントが好きだ。
特に夏の終わり。
丈高い向日葵もうなだれて、ロダンの彫刻「カレーの市民」を思わせるし
散歩道に点々と落ちた蝉の死骸や、咲き呆けてめっきり花数の減った百日紅も
あれほど燦然と輝いていた夏の、凋落の一こまだ。
しかし、短いながらも生を謳歌したものたちの安らかな充足感が、そこかしこに立ち込めている。
まだ睫毛の間にひっかかっている、すでに思い出となった夏の結晶を
少し斜めになった陽光がきらめかせる。
この宴のあとのような静けさほど、人生が束の間のものであることを
優しく思い起こさせてくれるものはない。
光と翳がさまざまに形を変えて私の中をよぎる。
喧騒と静寂。 追憶と忘却。 終焉と新生。
毎年この時期になると、私はただ時の流れを受け入れて、それを透過させる物体にすぎなくなる。
初秋が爽やかに訪れるまでの短い期間を、私はそうやって過ごしているように思う。
by mofu903
| 2010-09-11 15:40
| 季節